死してなお彼女は強く

14/14
前へ
/14ページ
次へ
 毎年、この日になると色々なことを考える。彼女が自殺した理由は、今になっても分からない。彼女をどこかで救えなかったか。自責の念にかられたこともあったが、すぐにそれは自己欺瞞だと気付いた。  俺は、未だにメールアドレスを変えていない。あの時のままだ。  いつの日か、また久保さんからの招待のメールがくる気がして、変えるに変えられないまま十二年目である。住田もアヤちゃんも、口には出さないがアドレスを変えていないところを見ると、同じ心持ちらしい。 「ねえ、何で久保さんは私たちを選んだのかな?」  三十路過ぎても美貌の変わらないアヤちゃんが問う。俺は首を傾げて苦笑した。 「なんとなくじゃないか?」  遠くの方で、どおんという祇園太鼓の音が聞えた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加