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毎年、この日になると色々なことを考える。彼女が自殺した理由は、今になっても分からない。彼女をどこかで救えなかったか。自責の念にかられたこともあったが、すぐにそれは自己欺瞞だと気付いた。
俺は、未だにメールアドレスを変えていない。あの時のままだ。
いつの日か、また久保さんからの招待のメールがくる気がして、変えるに変えられないまま十二年目である。住田もアヤちゃんも、口には出さないがアドレスを変えていないところを見ると、同じ心持ちらしい。
「ねえ、何で久保さんは私たちを選んだのかな?」
三十路過ぎても美貌の変わらないアヤちゃんが問う。俺は首を傾げて苦笑した。
「なんとなくじゃないか?」
遠くの方で、どおんという祇園太鼓の音が聞えた。
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