死してなお彼女は強く

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「アヤちゃん遅れるんだって?」  住田は車を走らせながら、助手席の俺に言った。 「問題ない、夕方には着くさ」  俺は答えると、煙草に火を点けた。歩道では、ハッピ姿の子供が目立つ。 「覚えてるか。中学の頃、祇園の神輿を強奪しようとしたこと」 「ああ、覚えてるよ。でも人数不足でな。結局、町内会の親父につかまっちまったよな。まったくバカばっかりだったよ。あのころはさ」  住田は笑っていたが、それはどこか絞り出したような印象を受けた。住田自身もそれを自覚したのだろうか、しばらく押し黙った。車内には沈黙が広がった。  本当にバカばっかりだった。彼女は、あの日、俺たちをどう思ったのだろうか。十二年前の八月二十五日。あの日も暑い夏の日だった。
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