死してなお彼女は強く

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 三日後、そんなメールのこともすっかり忘れていた俺は、忙しない労働に身を任せ、ようやく帰路に付いた。帰宅時はいつも無心で歩く。帰り道は身体が覚えているし、帰宅にまで無駄な労力を掛けたくはないのである。  とぼとぼと歩いている俺の足は、何故かある居酒屋の前で止まっていた。そして気付く。あれ、ここって確か……。  そこはあのメールに書かれていた同窓会会場だった。  これは自分でも驚くべきことだったのだが、俺はあれだけ早々に決め込んだ不参加という決定事項をあっさりと覆した。これといった要因はたぶんない。強いて言えばなんとなく。考えてみれば、今までだってなんとなく億劫だから参加してこなかったのだ。確固として不参加でなければならないと決めていた訳ではない。ただ、なんとなく。  であれば、それが裏返ることだってあるはずだ。それも至極、容易に。  加えて、もし誰も集まっていなかったら? という考えも同時に浮かんでいた。誰も集まらず、静かに一人、グラスを傾けている彼女を想像すると何だかとても可哀相に思えてきた。
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