14人が本棚に入れています
本棚に追加
だから、俺がその扉に手をかけたのは、そんな事態を救ってあげようという優しさのような感情も多少は含まれていたのだった。
「おお、最後の一人が殿様出勤だ!」
店内に入って早々、そんな声が聞えたので驚いた。そして、その声の先を見て更に驚いた。
そこにいたのは、先一昨日「俺は行かねえ」と堂々と不参加を宣言した住田だったのだ。
いや、驚くべきはそこではない。通された大広間には、五組のメンツ四十一人が一同に会していたのだ。極め付けに、担任の谷本先生までがいらしていたので腰が抜けそうだった。
宴もたけなわといった感じだった。俺は「久しぶり」という社交辞令もそこそこに、酒席に加わった。酒の匂いが充満していたが、すぐに慣れた。
しかし、ぐるりと周りを見渡してみても、これだけのメンツがよく集まったものだと思う。関東圏に就職した者も多かったし、一番驚いたのは、海外に就職したと風の噂で聞いていた綾瀬さんがこの席にいることだった。丁度、こっちに帰って来ていたとのことだったが、とんだ偶然もあるものだ。
最初のコメントを投稿しよう!