drache

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「辣華!」 「あ?んだよ」 振り向いた辣華はまるで寒さなど気にしていないように見える。 「な、なんなんだその格好は。厚着しろとは言わないから、せめて着物を直してくれ」 「なんでてめぇに説教されなきゃいけねぇんだよ」 「お前を見てると私が寒くてかなわん!」 「知るか!?」 そんな会話を続けること3分。 「着付け…わかんねぇんだよ」 辣華がそんなことを呟いた。 「着付け?そんなのこうして…」 自分の着物に手をかけ、そしてすぐに引っ込めた。 こんなところで脱ぐわけにいかない、しかも男の前で。 だからって彼の着物を直接直すのも…無理だ。 多少と言えど異性の肌に触れるのは流石に抵抗がある。 「あー…着付けな。今度教えてやるから…とりあえずこれでもつけとけ」 私は首にかけていたマフラーを辣華の首に巻いた。 「てめぇ寒いんじゃねぇのかよ」 「だからそれはお前のせいだと言っているだろう、大馬鹿者め。それお気に入りだからちゃんと返しに来いよ!!」 捨て台詞のように吐き捨て、着付けの本を買いに書店へと駆け出した。
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