初陣編_弐拾

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  私は気を取り直し、必死に謝罪を伝える。 「いえ、あの、言いすぎたと思います。 ・・・沢山の気遣いをいただいたのに・・・・ あんな言い方するなんて・・・ す、すみません。 怒ってらっしゃるのは、承知だったんですが・・・ その、あの・・・」 フッと鏡は笑って、顔を手で隠す。 あんなに寝るまであれこれ考えた台詞は一つも出てこない。 だから、 馬鹿の一つ覚えのように、ごめんなさい、と私はただ繰り返す。 許してほしかった。 もう一度、その視界に入れてほしかった。 でも、鏡は片手を上げ、謝罪を制し、 もう一つの片手で顔を覆い隠して、その表情を見せてはくれない。
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