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抱き締めてやんなきゃ、俺の想いは伝わらないのか…。
「あぁ、そう言う事だ」
それが、俺とトシコが付き合う事になったナレソメだ。
「トシコ?…トシコッ!…」
夢中になって、買ったばかりの半パンまで履いてるから、
「そんな事は、食事の後にしてからやれっつーの」
小さい子どもじゃあるまいし。
「あっ、あー、ごめんなちゃーい」
時々こうやって、叱ってやんねぇといけねぇのが、コイツの痛い所。
「なぁ、歩き疲れて、腹が減ってんだよ」
「そっ、そうだよね。すっ、すぐ作るから」
トシコは俺の空気を読んで、キッチンへと向かった。
「はぁーあ」
溜息と同時に、俺はソファーで寝そべって、やっとのんびりする。
でも、こうやって。
この感じが。
こう、やっぱり。
そうだな、これってモノが何もなく、平穏に只々時間だけが流れていく生活が、俺にとっての幸せなんじゃないかって思える訳だ。
そして、トシコを幸せにしてやってるんじゃないのかなーと思えてくる。
キッチンに立つトシコをチラッと見て、
「…アホトシコ」
ぼやいたりしても。
おまえのその口笛に、俺と居てなんとなく幸せだと思えてくれていたら、いいのになーと思えてくる。
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