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「うぉら、早く靴をはけっ」
「だってだって!カカトがうまく入らないんだものー!のんびりでいいってばー!」
永田ってば、なんなのよ!
玄関先で、今日からテンヤワンヤ。
「うるっせぇ、遅刻すんぞ」
バシッと尻を叩かれて、私は急かされる。
「痛ッたいなー、もぉー!」
私が仕事に遅刻しないようにと、のんびり屋の永田は、私と一緒に早起きしてくれて、更にはわざと急かす。
口を尖らせてスネていると、突然の不意討ち。
…チュッ…
「あー!」
「あー?」
永田を見ると、相変わらず余裕有りな無表情だし。
「キスだけかよー、つまんなーい!」
とか言いながら、私は恥ずかしくなって、時間がないのに永田に引っ付く。
すると、大きな手で頭を撫ててくれて、
「よしよし、続きは、帰った後なぁー」
永田は優しい顔をやっとしてくれたから、私は素直に納得。
「はい。お仕事、今日も頑張りやんす!」
「おぉ、頑張って来い。玄関、閉めとくから、先に行け」
お揃いの鈴の付いた鍵を、永田は私に見せるようにして、手を振った。
「行ってきます!」
私も手を振り、自転車に乗って、永田に見送られながら仕事場へ。
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