第一幕 『死に損ないと少女』

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 だが、その時丁度、彼はゲームの中で敵機に囲まれていた。 「包囲されてるか……」  隆義は小さく呟き、ロボットを岩陰に飛び込ませる。たちまち、画面は多数の銃弾とミサイルで一杯になるが、飛んでくる弾幕を、岩を盾にして躱し、隙を突いて次の岩陰へ。同時に敵集団へ手榴弾を投げこむ。  爆発と共に、あまり丈夫でない敵機が爆散し、弾幕に隙間ができた。岩陰から弾幕の隙間を縫ってマシンガン発射、手榴弾で損傷した敵機を次々と薙ぎ倒していく。 「……!」  眠気のせいで意識が朦朧とし始めている。隆義は心の底で〝やばいな〟と思いながら、画面の赤枠の中に敵機を入れながら、機関銃の発射ボタンを押し込んだ。  赤枠の中に捉えられた敵機にはロックオンマーカーが表示され、次々とそれらに弾が飛んでいく。 (あと少し……)  今、最後の一機を破壊した。隆義は自機が受けたダメージを確認しながら、ようやく安堵する。 「……こいつみたいなロボットが、本当に俺の手元にあったらな」  隆義は、自らの願望を呟いた。いつもやられっぱなしで、今日もそうだった。さすがにロボットは荒唐無稽ではあるが、それでも彼は〝力が欲しい〟と思わずにはいられなかったのだ。  ロボットは今、機体を格納できる容器のような物体の前に立っている。そこでボタンを押し込むと、それは自動的にその中に移動した。  機体の固定が完了すると、そこから瞬時に溶接機やロボットアームが伸び、壊れた部品の交換や弾薬の補充が開始される。  同時に、画面の上にはセーブして中断するか、続けるか、メニュー画面が表示された。 「……地下三十五階、ここまでにしよう」  先はまだまだ長い。このミッションは、始める度に迷路の形が変わり、地下に進む程、敵も強力になっていく。一撃で倒せる雑魚敵も群れになり、確実にロボットの装甲と耐久力を削って来るのだ。  だが、さすがに眠気は限界に来ていた。隆義はミッションを中断し、データをセーブしてスイッチを切る。  間もなく、彼はタオルケットに包まると、そのまま眠りに落ちていった。  そうして意識が混沌とした闇の中に入り、どのぐらいが経っただろう。
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