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──朝だ。
深夜の雷雨が嘘だったかのように、空は晴れている。そして太陽の光がカーテンの隙間から、隆義の顔に降り注いでいた。
「……」
眩しさのあまり、手で自分の顔に触れる。その瞬間、左目の瞼から痛みが走り、隆義は思わず呻いた。
「ぐぅ…… 痛ぇ……」
しかも、体が動くたびに、腫れた全身から痛みが連鎖する。こうなると、しばらく痛みを堪えて固まりながら、治まるのを待つしかない。
「まだ、いたむんね?」
「え……?」
今度は紛れもない。声が、はっきりと聞こえた。
しかも、自分のすぐ真上からだ。隆義は恐る恐る、ゆっくりとした動作で顔を真上へと向ける。
「むー……」
いた。半透明、女の子、赤い着物。三、二、一──
「ぎゃ─────────ッ!?」
朝も早くから、とんでもない絶叫が家の中に響き渡った。
「うるさーいッ!!」
隣の部屋の姉から抗議の声! にも関わらず、隆義は上を向いたまま固まった。すぐに下の階から階段を上がって来る音が聞こえ……
「隆義、どしたん!大丈夫!?」
「ふぇ?えぇ!?」
すぐに部屋の引き戸が開き、慌てた様子の母と、不機嫌な顔をした姉が入って来る。
この騒ぎは半透明の少女の方が逆に驚いた。おろおろと辺りを見回し、隆義とその家族を交互に見つめた。当の隆義の方は叫んだ瞬間、全身に痛みが走り、それを堪える為に硬直している。
「どどどどどどうしよう?どうすればええんよ?」
少女は慌てて頭を抱え、おろおろと狼狽する。そして──
「……痛ぇ ……全身」
──隆義は静かに、そう呟いた。
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