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ゲートを潜って出た先には、見慣れた建物と見慣れた面々。
「お久しぶりですオイドさん。外でのお仕事本当にお疲れ様でした。いつものブレンドの珈琲が出来ていますから、どうぞ」
初老の男性、このバーのマスターであるエフォールト・ワイヒェル氏。皆からは親しみを込めてマスターと呼ばれています。
「マスター、いつもありがとうございます。あまりここに来れないのに...」
「いえいえ、オイドさん。貴方が居てこそ連合とこの境界内で折り合いが付くのです。でなければ今頃は私もこのように落ち着いて珈琲を淹れることも出来なかったでしょう」
「マスター...貴方は本当に好い人だ」
真の善人とは彼の事を言うのでしょう。私も見倣いたいものです。
そして、マスターの隣でしかめ面をして私を睨んでいるのが我々のリーダー、アレイア・フィート・ティグニス。外見は10代前半の少女ですが実年齢は......おっと、あまり女性の年齢についてあれこれ考えるのは宜しいことではありませんね。
「オイド遅い!食材は買ってきたのか!」
「すみませんお嬢。今回の外出は食材の確保では無かったもので...」
「なんだとッ!?」
あれ、出発前に説明した筈なんですが。
「ねーちゃんマジでご機嫌斜めだな」
「レト!今あるので何か作れ!」
「残念だが冷蔵庫は空っぽだ。ちなみに言っておくが俺の用件も買い出しじゃないから文句は言うなよ?」
「ぐぬぬぬ......」
お嬢...アレイア嬢は普段は凛々しく冷静なのですが、空腹になると何というか外見相応な性格になるのです。難儀な。
そういうわけでどうしたものかと考えますが、無いものは無いですし何より境界外出許可証がないので外に出ることも出来ません。困りましたねぇ......。
「そういやディマータの姉貴はどこ行ったんだよ?何時もならドル様ぁ~って飛び付いてくるんにさ」
「僕は居ない方が嬉しいんだけどね...でも確かに彼女ならゲートを開けた時点でこっちに来そうなものだけど」
「ごはんー!」
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