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「ハルカ・シラヌイ君、君に異動命令が出たんだ」
「い、異動...ですか!?」
誰もいなくなったオフィスに上司から呼び出しをくらい、何事かと思えば唐突な異動命令。普段同僚からナマケモノと呼ばれる私でさえ驚いた。
「ななななにかミスがありましたか!?はっ、まさか昨日の書類のせいで大損害が......!?わ、私、まだ身体を売る覚悟は出来てないですっ」
「シラヌイ君、ちょっと落ち着きなさい。君に不備があったわけではない......確かに勤務態度に若干のマイナスはあったが......」
「やっぱりぃ!」
「話を最後まで聞きなさい、今回の異動は上からの命令でね、君にしか頼めないんだよ」
「......えっと」
「詳しくはこの書類に書かれている。ただ覚えておいてほしい、この異動は我が機関において非常に重要な地位を占めているということを」
書類を受け取り読んでみると、堅苦しい文章で私の処遇の理由が書かれていた。
『ミス・シラヌイ、突然の異動命令に動揺していることだろう。今回の君の異動にはとある重要なプロジェクトが関わっている。これはその一環だ。君には異動先でいくつかの仕事をこなしてもらいたい。仕事の詳細は機密上この文面で記述することはできないが、異動先で説明があると思う。それに従ってくれれば何の問題もない。そして一つ、この件が外部に漏れることは好ましくない。なるべく秘匿するように』
「なんだか凄く責任重大な...」
「その通りだ。だが君ならやり遂げられると信じている。どうかね、引き受けてはくれないか」
「も、もし断ったら」
「世界が終わる.....くらいには絶望的な状況になるだろうな」
「やっぱり"アレ"関係ですか!」
「当然だろう、我々の機関が何なのか忘れたのか」
覚えています、覚えていますとも。
『白い匣』を閉じ込めるための障壁を展開する技術を使って、連合国軍と協力して防衛に当たっている機関。
境界維持特例機関(Institution of Border Maintenance)、通称『IBM』と呼ばれる、人類が誇る巨大組織。
私、そこに勤めるただの事務員なんですけど......。
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