1杯目 / 境界と終末世界

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「私の言葉の意味も着けば解る筈です。さぁ見えてきましたよ、人類最後の希望『境界』が」 地平線の先にぼんやりと白く見える三角形の建物、あれがIBMの境界発生装置。白い匣を中心に30km離れた場所に4基、東西南北に建てられていて、そこから神々を封じ込める壁がドーム状に展開されている。 とは話には聞いていたけど実際に見るのはこれが初めて.......というのも一般人が立ち入りを禁じられている絶対防衛圏が、ドームの周囲、半径200kmに設置されている。 このハルデオン州は大半を防衛圏が占めているため、実質的に人が住んでいるのは私のいた街、エルテノーア都市だけ。エルテノーアは白い匣から最も近い人口密集区域なので連合軍の警戒も他の都市に比べ厳重になっている。 「そろそろ到着となりますが、気を付けてくださいね......最近かなり大きなテロ組織がここら辺りで出没したとの情報がありますので、壁の近くとはいえ安心できないのが現状です。いや、警備をあれだけ敷いているのにこの様とはお恥ずかしい」 「あの防衛圏をぬけてまでテロを起こしているんですか」 「そのようです。テロに関しては一般に情報は伏せていますが、簡単に言うと壁の撤廃を求めているんです」 「え、でもそんなことしたら......」 「人類に明るい未来は無いでしょうね。しかし彼らは所謂カルトというもので、白い匣の神々を信仰の対象としているらしいのです」 そんな物好きもいるんだなぁ。 「なので、降りるときもお気を付けて。私が先に降りて一通りの安全は確認いたしますが、もし狙撃されて私が死んだ場合は急いでドアを閉め、じっとしていてください」 「そんな、死ぬなんて....」 「私の仕事は貴女を安全にお運びする事と言った筈です。ドアを開ける際は私の体で車内への照準を妨害します。良いと言うまで決して動かないでください」 それから数十分後、三角形の境界発生装置が天高くそびえるほどに近付いたところで車が止まった。装置のふもとには警備に当たる人が見えるがちょっと遠い。
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