ある日のカンベ君

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「無理無理! 無理っす! 先輩のお願いなんてロクなもんじゃな……いや、そもそも! 自分の分は自分で払うっすから!」 首が取れるんじゃないかというくらいの勢いでブンブンと首を横に振るが、先輩は笑顔を崩さない。 それどころか逃がさないとばかりに俺を囲うように、俺の後ろの壁に手をついて顔を近付けてきた。 怖い! この壁ドンめちゃくちゃ怖い! 笑顔なのに怖い!! 「デートやのにヒロにお金出させる訳無いやん」 「いえいえ、お気遣いなく!」 きっと俺は今、先輩好みの怯えた表情をしているのだろう。 俺を見る先輩の目がキラキラ輝いてますからね! 『いじめたい』って顔に書いてるっすからね! 「一日二十食限定スペシャルパンケーキ……知り合いの伝で予約出来んねん。特別に契約してる養蜂場のハチミツを使うてるとかで、二十食以上は提供出来んらしくてなぁ~」 パンケーキにハチミツ……。 パンケーキの上のバニラアイスに燦然と輝く黄金色の蜜がかかっている画を想像して、思わずゴクリと唾を飲み込む。 パンケーキにハチミツなんて、最強タッグじゃないっすか! それに惹かれない人間なんて居ない。 少なくとも俺は惹かれる! しかも特別とか限定とか、日本人が大好きなフレーズだもん! そして俺も純粋な日本人だもん! .
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