都市伝説

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 普段は面倒くさがって部活に出ないが、今日は出る理由があった。だというのに今は、部活に出る気分ではなくなっている。  その理由は、死ぬほど怒られたからだ。小学生みたいな理由だが、言動の気力を奪うには十分すぎる出来事だった。  だいたい、数学の問題を答えなかっただけで、あんなに怒るものだろうか。あの禿げ教師のせいで帰る気力も、部活に出る気力もなくなり、ただひたすらに『死にたい』という思いのみで屋上に来てしまった。  本来の予定だったらここに立ち『いい眺めだ』で済む予定だったというのに。  簡単に回想してみると、心の底から腹立たしい気持ちになる。フェンスでも蹴り上げようと思ったのだが、さすがに止めておいた。 「Kくーん? どこー!」  それにしてもどういう確証があって、あいつは人のあだ名を叫び続けているのだろう。  いい加減、誰かに気付かれそうなものだが、誰も立ち入ることはない。ある意味、不幸中の幸いだった。  『K君』というのは声の主、斎野 寧々(さいの ねね)が勝手に呼んでいる僕のあだ名だ。  以前、なんとなく理由を聞いてみたところ「玖島 久遠(くしま くおん)でK君なんだよ!」と非常に腹の立つ顔で言われた。簡単に言うと頭文字から取ったのだという。
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