40人が本棚に入れています
本棚に追加
さすがにいなくなったことに、気づいているはずだ。
気づいていなかったら、あいつは一人で話す痛い子になる。だが、返事をしない僕は元々いないに等しい存在だ。
追いつくと、またも平然と後ろを歩く。まさか本気で気づいていなかったのだろうか。そうすると、こいつはかなり鈍感と言うことになるが。
足音が二つになったことに気付いたのだろうか、斎野が振り返った。
ふわっとチェックのスカートと腰まである長い黒髪が揺れる。香水かシャンプーか、甘ったるい匂いがふわりと漂う。
「あっ、いた! どこ行ってたの?」
首筋を掻きながら、人差し指で上を指さす。適当にトイレにでも行ったことにしよう。
ジェスチャーに目を瞬かせると、斎野は回答した。
「あ、もしかして、トイレ?」
よく分かったな。
「まあ、K君のことだしねぇ」
心が読めるのだろうか。
「そうだ。K君は『メリーさんの電話』って知ってるよね」
唐突な話の切り替えに、頷いてみせた。『メリーさんの電話』というと、誰もが知っているような有名な都市伝説だ。
最初のコメントを投稿しよう!