都市伝説

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 一度会ったら忘れない人だと、四月に斎野が言っていた。それには同感だ。  白髪に、紅い目、赤く縁取られた眼鏡、白い肌、女性みたいに小さい顎__漫画のキャラクターのコスプレ、と言われても違和感がない。まあ、麗衣を外人だと考えれば身長も高いし、格好いい。成績がいい。そのうえ、気遣いのできる青年だ。つまるところ、普通よりかは色々とずば抜けている。  イケメン、優しいとあれば女子に人気そうである。だが、彼の欠点を一つ上げさせていただくと、常に無表情で喋らないことだ。そのせいで、周囲からは皮肉として『人形少年』と呼ばれ続けている。  そのことについて本人はノーコメントを貫いているが、気分は悪いはずだ。彼の気持ちは、分からなくもなかった。    ただ、かといってやみくもに理解していいものではない。人には踏み入れられて、いい部分といけない部分があるからだ。僕はそれをよく分かっているつもりである。 「ゼロ君、聞いてよー!」  斎野が麗衣の隣に座る。その様子はさながら、付き合い始めたカップルにも見えなくもない。  良く言えば友好的、悪く言えば馴れ馴れしい斎野が、無表情の麗衣に話しかけるのはいつものことだ。彼女の人柄を、よく表している行動だろう。  だが麗衣の反応が無さ過ぎて、客観的に見ると斎野の話を完全に無視しているようにも見える。
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