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__ゴンッ!
重量感のある音が、耳に届く。
壁にぶつけたせいで壊れていないかという心配よりも、恐怖心のほうが強かった。強く奥歯を噛み締め、携帯を睨み付ける。八つ当たりなのは分かっているが、こうしないと気が済まないのだ。
ほとんど無意識に、ズボンで汗ばんだ手を拭いた。震えた手で、コンビニで買ってきたジュースの蓋を開け、流し込む。味を考える間もなく、ただの冷たい甘味飲料が喉を通っていったことくらいしか、分からなかった。
そして一度、二度、深呼吸をする。
しかし、電子的で無機質な文字が頭に浮かんでは、消えた。それに心臓の鼓動がまだ、おさまらない。
深呼吸に効果が無いと分かると、よろめきながら立ち上がる。次やるべき行動は、分かっていた。
意識的に携帯を避けつつ、キッチンに向かう。
片隅で、携帯が拾ってと言わんばかりに明かりを放っていた。見ないようにと目線を向ける。
片付いているかは、分からない。だが、とりあえずあるべき場所に片付けてある。部屋の明かりで少し薄暗いキッチンに、足を踏み入れた。
食器棚のガラス戸、右側にいくつか保管してある。食器棚のガラス戸、右側にいくつか保管してある。手先の感覚だけで、目当ての物を探す出した。手になじんだそれを引き抜くと、夏だというのに柄がひんやりとしている。
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