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私室に戻ってくると、あの不気味な明かりは消えていた。そのことに安堵しながらベッドに座る。安いものなので軋む音がするのはいつものことなのだが、今は過剰に反応してしまった。
__どれもこれも、あの文面のせいだ。
舌打ちとともに、ゆっくりと左腕に巻かれた包帯を剥がしていく。すると、古傷の上や隣に、まだ新しい傷口と洗いきれなかった血の跡があらわになった。大方、止血した後に疲れて眠ったのだろう。
昨日はやりすぎたか、と見慣れた傷口を指先でなぞった。
何度も切りすぎたせいで皮膚が固く、ゲロイドになりつつある傷。まるで迷路みたい。そんな簡単に表していいものではないけど、ぞわっと背筋が粟立ったような気がした。
傷だらけの手に包み込まれた果物ナイフを、きつく握りしめた。
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