はじまり…

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目の前には、見慣れた自分の部屋があったはずなのに、それは見事に消え去っていた。 かわりに目の前に寂れた駅のホームが現れたのだった。 薄くモヤがかかっていて、人の気配が全くない。 無人駅なのだろうか? とりあえずベンチに座り、スマホを確認する。 ある程度予想はしてたが、圏外だった。 これからどうしようか思っていたら、ゴォーーーっという音と共に電車がホームへと入ってきた。 電車はゆっくりととまり、ドアが開く。 中を伺うと他にも人が乗ってることに安堵した。 「お乗りになりますか?」 突然声をかけられビクッとする。 開いたドアの前に男の人が立っていた。 さっきまで誰もいなかったのに…。 格好からして、車掌だろうか。 「この電車は異世界行きになります。お乗りになりますか?」 車掌が聞いてきた。 異世界、という言葉にちょっとワクワクした俺は電車に乗り込もうとした。 が、チケットを持ってないことに気付きその足を止める。 そんな俺を見て、車掌は首を傾げる。 「あぁ、もしかして、チケットをお持ちではないのですか?」 「……はい…。」 「もしかして、メールが来ませんでした?」 「あ、それなら!」 「ならば、どうぞお乗りください。」 車掌の言葉に安堵した俺は電車に乗り込んだ。 まるで俺が乗り込むのを待ってたかのように、俺が乗り込んだ直後にドアがしまる。そして、特に車内放送もなく電車は走り出したのだった。
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