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辺りを見渡すと、他にも人がいることはいるが、全員これでもかというほどに頭を垂れている。
そして、微動だにすることなく座っている。
さすがに気味悪くなった俺は、隣の車両に移動しようとしてる車掌のもとへと駆け寄った。
「あの、すいません。」
俺の問いかけに、車掌は足を止めた。
「なんですか?」
こちらを振り向かずに返事をした。
「異世界に行くって…いったいどこに行くんですか?」
俺の言葉に車掌は首を傾げる。
「ははぁ…。お客さんも何も知らないクチですか…?」
静かに車掌が言った。
「え?どういう…?」
俺がそこまで言いかけたとき、車掌の首がグリンと回り頭だけがこちらを向いた。
「ひっ……!!」
初めてしっかりと見た車掌の顔は、目がぽっかりと空洞で、口はやがて耳まで裂けそうなほど大きく歪んでいた。
空洞の目や口からは血が滴り落ち、ニヤリと笑っている。
俺は思わずしりもちをついた。
そんな俺を首だけグニャリと曲げのぞきこむ。
「お客さん…。知らないんですか…?」
ガタガタと足が震え、立とうにも立てない。
後ろを振り返ると、さっきまで俯いていた人達が全員こちらを見てニヤニヤと笑っている。
その目は車掌と同じく空洞で、全員顔が血だらけだった。
「あ…、あ…。」
声にならない声をあげる。
「異世界行き…なんて…うそですよ………。いや、ある意味、異世界ですかね…。」
ニヤニヤ笑いながら、その不気味な顔を俺の方へと近付ける。
「……っ!!」
思わずしりもちをついたまま後退さる。
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