Round No.1

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テーブルの上に置かれた 手帳の切れ端と思わしきそこに 物凄く目を見張る、達筆な文字が収まっていた。 普段PCがほとんど活躍の場を占めているので あまり、手書き、には触れた事がなかったのダ。 『始発で帰る また、来週な』 …………何故 これを見て、目の前が滲んでくるのか 分かりますか? 誰かご存知の方がいらっしゃったら レクチャってください…… 締め付けられるほど苦しくなる胸の奥と 溢れて零れる寸前まで張った涙と その意味を、私は今は寂しいとしか 捉えられなくて 倉内翔の側にずっといたいと強く願っていたのに 離れる時はこんなに悲しい。 この物語はコメディ要素は満載のはずなのに これじゃぁ、笑えませんし…… 「……か、ける、くんっ」 私はこの先 こんな思いと、沢山の不安とを乗り越えてゆけるのでショか。 スマホを引き寄せて ラインを開く。 倉内翔に送ったのは 当たり障りのないセリフだった。 イッテラッサイと気を付けて。 壁に掛かった時計が歪んで、またクリアになって また、歪む。 魔導士になんて、なれねし。 逆さまなのに、ちゃんと時を刻んでいくその針を 目で追いかけて 始発に乗ると言った倉内翔が もう新大阪につく頃だなぁ、と ぽつん、とそう思った。
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