Round No.2

2/39
11355人が本棚に入れています
本棚に追加
/537ページ
「久しぶり、もも」 「あ゛」 もう絶対に会うことは無いだろ、と思ってた男。 「……まぁ、そんな顔されるのも 当たり前か」 ハハハ、と力無く笑った匠くん。 全国展開の水速美容外科、本店事務長の兵藤 匠は 私の高校時代の彼氏だ。 こないだ水速の仕事を引き受けた時に再会して あまり、良くない別れ方をした男。 「どのツラ下げてここにいるんスか ……匠くん」 なっがい長い前髪の隙間から 匠くんをを見る事もせずに答えた私に対して 「随分だな、もも」 いけしゃあしゃあと呼び捨てられる名前にも腹が立った。 「仕方ないか」 会社を出る手前で、またまた面倒な事に遭遇したもんだ、と 大きく溜め息を吐いた。 匠くんの前を素通りしようとして 呼び止められる。 なんだ、なんか用かヨ。 「もも、ごめん、会いたくないのは分かってる」 「じゃぁ、来ないでくだサイ」 一旦は立ち止まりかけた歩みを止めずに 立ち去ろうとして 「謝りに来たんだ」 「けっこうでっス」 着いてくる気配のある事に 嫌悪感が溢れ出す。 とにかく、匠くんの顔は二度と見たくない、いや、半径2万キロ内に居るという事さえイヤだ。 「もも!」 「うるさいし!」 こんなに声を荒げた事はなかった。 今までどうでもイイような人生設計だったからだろウか。 「もう匠くんとは関わりたくありませんし どうぞ二度と目の前に現れないデいただきたいっ」 初めて、振り返って匠くんを見て驚いた。 それは、なっがい長い前髪の隙間から見てもセンセーショナル。
/537ページ

最初のコメントを投稿しよう!