Round No.2

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そう言えば、一度だけこれと同じシーンを 見た事がある、ような、……気がシた。 あれはいつだっただろうか。 確かまだ匠くんとお付き合いする前の頃。 水泳部だった匠くんの学年男子先輩がみーんな 頭を丸めた。 なんだっけ、良からぬ事をしでかした、と いうふうな理由だったと思いまスが。 「髪、切ったんでスか」 「ん、反省して」 「は?」 匠くんの髪は、甲子園に出場できるような短さになっていた。 「あれからさ、色々考えたんだ」 「……遅いですよ、考えるのガ……」 反省? 遅すぎまっスよ。 「色々考えて最後に残ったのがももの事でさ」 「はぁ?」 「あんな感じで蹴られた事もなくて ちょっと衝撃的だった……」 「い、いや、蹴られて当然でスよ」 今まで誰にも文句を言われなかったんだろうか。 「ん……だからね、付き合ってた女の子とも ちゃんと、別れたんだ」 「は?」 「……好きなんだ」 「はい?」 嫌な予感だ。 なっがい長い前髪下で汗が流れるのがわかった。 「ももが好きなんだ」 真っ直ぐにこっちを見つめてくる 匠くんの視線は真剣一直線。 だけど…… 「!」 開いた口を閉じようにも閉じらレない。 固まった足を動かそうにも動かナい。 「わ、わ、わ、」 怖すぎて、声が上手く出ナい! 「今度は、あんな事、しないよ……」 「い、い、いぇ、けっこうでス、匠くん」 「ちょっと考えとい」 「なにやってんの?」 私の背中から掛かった声が ちょっと、あまり馴染みのない声だったけど 匠くんのジリジリと近付いてくる動きを止めるのには ちょうどよかった。
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