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「ヒとをのろわばあ名ふ他ツ──」
声に出して読んだ瞬間。
繁は息を忘れて呆然と立ち尽くした。
人を呪わば穴二つ。
繁にはこの言葉について詳しいことはわからなかった。
しかし、聞いたことがあるそのことわざの意味くらいなら知っている。
「なんだよ・・・それ」
本日何度目かもわからないその台詞を、繁は再び溢した。
「そんなことなら────」
そこまで言った繁の言葉は視界の端に映った眩い光に遮られた。
そちらを向き、目を細めて正体を探ろうとするが、眩しすぎて不可能だった。
そして。
光が収まると同時に繁の目に飛び込んできたのは視界を覆い尽くす大型トラックの姿。
「あんなの送らなきゃよかった」
それが繁が発した最期の言葉だった。
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