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「いや、おっちゃんもな。無理言ってるつもりはないねん。君かて事情っつーもんがあるわけやろうし。四六時中こっちのことを考えろっていうのは流石に無茶だと思う。」
「はあ・・・・」
「でもな?分かるやろ!?」
「えっと・・・まぁ。」
私、田村梨絵は気の抜けた返事をする。ちなみに何の話なのか全くもって分かっていない。
疑問を抱えたまま私は自分の部屋のベッドの上を見た。そこには足を組んで座っているクマのぬいぐるみがいる。
そして、彼(?)に言われるがまま、ベッドの前で正座をしているのが私だ。
「こっちも仕事でこういうことしてんねんからな。それなりの義務ってもんがあるわけやん?」
「義務・・・ですか?」
何の義務だろうか。ピンとこない。
ちなみに、この偉そうなぬいぐるみは私が小さいころ誕生日に買ってもらったもの。赤ちゃんと同じくらいの大きさのため、当時はとても巨大に感じたものだ。
「君を楽しませるっていう義務にきまっとるやろ!そういう使命でおっちゃんたちぬいぐるみは子供たちのもとに運ばれとんねん。」
当たり前やないかとブツブツつぶやいていた
「いや、当たり前って言われても。」
そんなことを言われても困る。クマのぬいぐるみが関西弁でしゃべりだすということ自体、私の中では全然当たり前のことではない。
「てか、私、お客さん待たせているんだけど。もう行っても良い・・ですか?」
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