出会い

4/7
前へ
/26ページ
次へ
「あぁ、悲しいなー。昔はもっと素直ないい子やったのに。悲しいなぁー。おっちゃん悲しいなぁ。本当になー。」」 チラチラとこちらを見ているぬいぐるみを前に、「なんでこんなことになっちゃんだろう。」と私はことの発端である数分前の出来事を思い出した。 私は自分の部屋のクローゼットの扉を開き、荷物の整理をしていた。 普段使わないものは、ほとんどこの中に詰め込んでいたので、ずっと前に探していたカバンや、遥か昔に使わなくなった化粧品、捨てたとばかり思っていたはずの服が次々に出てきた。 そこで見つけたのが、このぬいぐるみだった。 そして、埃まみれのぬいぐるみは、私が持ち上げたと同時に口を開いたのだ。 「いやー、かなわんわ~」 驚いた私は思わず手を離してしまい、重力に従ってぬいぐるみは地面へと落下する。 「痛っ!」とぬいぐるみは声をあげると、1人でむくっと起き上がり、体中の埃を自分で払うと、私のベッドによじ登った。 「ちょっとそこに正座しようか?」 呆然とする私に向かってクマのぬいぐるみは説教を始めたのだった。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加