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そして現在に至る。
「おっちゃんかてな。分かっとんねん。」
気づけばぬいぐるみは、窓の外を見ていた。
どうやら、完全に出て行くタイミングを失ってしまったらしい。彼は既に自分の世界に入ってしまっている。
「分かってんねん。本当はな、おっちゃんかてな、分かってるんやでぇ。」
「マジで、マ・ジ・で・分かってるんや。本当の本当に。」
「はぁ・・・でもなぁ、ここまで分かってるってのも辛いもんや。辛いなぁ。しんどいなぁ。」
「分かってる分かってる。分かってるんねん。そう、重々承知しているんや。」
「・・何が?」
待ってましたとばかりにぬいぐるみは話し始める。
「君はもうおっちゃんみたいなぬいぐるみを必要とする歳やない。そんなことは分かってるんや。」
それにな、と私の方を見る。
「おっちゃんも見ての通り40歳過ぎやろ?」
私に同意を求めるように両手を広げ、首をすくめた。「やれやれだぜ」と言わんばかりのポーズである。
「・・・いや、うん。見ての通りと言われても」
どの辺が40歳なのか全然分からない。するとぬいぐるみは微笑んだ。
「優しいな。まだまだ若いといってくれるんか。」
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