14人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
第五話
「…お姉ちゃん!猫、お姉ちゃんから離れろよ!」
引き離そうと手を出した瞬間、チェシャネコはひらりと木上に舞い戻る。(ふぅ…
「…ちぇ!やーっぱ来ちゃったか。ざーんねん。
おまえだって、キスしたくせに…。」
「?!い、いいでしょ!」
アリスは二人のやり取りに唖然として何も言えないでいた。
「…ボクはアリスが好きだよ。ボクだけにものにしたい。」
「僕だって好きだよ!猫なんかに渡すもんか!」
アリスは全く状況が読めないでいた。
「…ごめんね、アリス。いきなりキスしちゃって…。
猫は僕が何とかしておくから逃げて!」
「なにいってるの?!アリスはここにいるんだよ!
勝手なこと言わないでくれる?!
ねぇ、アリス?他のヤツのとこなんかに行かないでよ…。」
アリスは戸惑っていた。
こんな状況は初めて。知るはずがない。訳がわからず、立ち尽くすしかなかった。
「わ、私はどうしたら、いいの?
わからない…知らない…なんなの?
好き?好きって何よ?!
そんな言葉…そんな言葉…信じない。
信じないんだから!」
アリスはパニックを起こしていた。
聞き慣れた言葉。メアリーアンがいつも言っていた。
アリスは知っていた。けれど、理解したくなかった。
嘘だと…嘘だと思わなければたってもいられないくらいだった。
理解することが怖かった。
自分が自分でいられなくなりそうで…。
アリスは絶句する二人をその場に残し、宛もなく走り出した。
最初のコメントを投稿しよう!