第六話

1/1

14人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ

第六話

アリスは脇目もふらず、ただただ走った。 いつのまにか涙が零れていた。 自分でもわからなかった。 〈可愛い〉、〈好き〉 そんな言葉なんて異性に言われたことなどなかった。 ただただ戸惑いで混乱していた。 気がつくと、眩しい光と共にひらけた場所に出た。 そこでは暢気にお茶会が開かれていた。 「…どうしたの?可愛い顔が涙でぐしゃぐしゃだよ? それでも可愛いけど。」 頭の上から甘い声が聞こえ、思わず顔をあげる。 「…また、耳。」 三月ウサギが優しい顔でアリスを見つめていた。(うぐぐ 「んー?時計ウサギとチェシャネコにあったのか。災難だったね。」 更に目を細めてアリスを見つめる。(やめろぉ 「…俺なら順序考えるんだけどな。 女の子の扱いを知らない子どもは困るね。」 そういうと、アリスの頭を優しく撫で始める。 アリスは言葉と裏腹に優しい行動に戸惑った。 「…何してやがる。茶が冷めるだろうが。 おい、小娘。おまえも飲んでけ。 眠りネズミ!」 帽子屋がぶっきらぼうに誘い、眠りネズミに促す。 「いいよぉ…お姉ちゃんもー飲んでいきなよぉ…zzz」 「寝るんじゃねぇよ!さっさと淹れろよ。」 眠りネズミはのろのろ起きるとゆっくりお茶を淹れ始める。 「帽子屋の旦那ぁ。女の子には優しくしようよ。 泣いてるんだしさぁ。」 「小娘にゃ変わりねぇだろうが。」 顔も見ずにいい放つ。(こいつ… 「そんなんじゃモテないよー?」 「う、うるせぇよ!黙ってろ!イカレウサギが!」 そういわれても三月ウサギはニコニコ顔をしていた。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加