第1章

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声が止んだ、いつの間にか手にはハサミが握られていた 最低の冗談だ、ハサミを握る感覚がこれは現実だと教えてくる。 なぜこうなった、思いだそうにも何も思い出せない 頭がガンガンする、くそ、飲みすぎて頭がいかれたのか? 俺の知らない10万人と最愛の女性? 最愛の女性とは一体誰の事だ?母はずいぶん昔に亡くなっている、もしかして昔世話になった学校の先生か? ………いや、わかってる…わかっているよ 俺には婚約者がいる、俺にはもったいないぐらいの良くできた優しい女性だ 今年中には式をあげるつもりでいる 庭付きの一戸建てに住んで犬を飼うんだ、子供は3人男の子だ 長男は立派な大人になるため習い事を沢山させよう、将来やっていて良かったと思うはずだ 次男は好きにさせよう、自由に生きる事の素晴らしさを知ってもらいたい 三男はうんと甘やかす、彼女のような愛に満ちた人になってほしい "早く切ってください" 俺が現実逃避をしているとまたあの抑揚のない単調な声が聞こえてきた 「わかってるよ、くそっ」 ここで迷わずスパッと赤いロープを切れれば格好いいんだろうな
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