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ムムッと眉を寄せた、山都は言う。
「あのな、伊織、俺は調べることがあるんだよ」
なのに、途中の駅で強引に降ろされ、ファミレスに連れ込まれた。
「そうだね」
「そうだねってお前な。俺達はここで呑気にパフェ、食ってる場合じゃないんだよ」
「食べてるのは私だ」
「そんなことはどうでもいい。早く帰ろうって言ってんだよ」
「私はパフェが食べたいんだ。だから、食べる」
「そうか。じゃあ一人で食べてろ。俺は一人で……」
帰ると言いかけたところで、誰かが隣に座った。
「いやいや、いいじゃないか。ゆっくりとして行こうじゃないか」
と真っ赤な髪の少女が隣に座り、ニッコリと笑った。伊織がブッとパフェを吹き出しかけて、山都が警戒し睨みつけた。
「可憐。テメーなにしにやがった」
「なに、君たちが楽しくしていたからね。こうやって割り込んでやろうと思っただけさ。ね? 山都くん。私もケーキ、食べたいなぁ。伊織に奢っておいてほしいな」
ね? と寄り添ってくる少女の名は、可憐で世界を灰にするために暗躍する神様。
「可憐!! 山都にくっつきすぎだ。というか、本当に君は何をしに来たんだ!!」
「だから、私は遊びに来ただけだよ。宣戦布告したからって遊びに来てはいけない理由にはならないだろ? それとも君は戦うつもりのない相手を一方的に暴力を振るうのかな?」
可憐は、暴力には、非暴力だと言った。山都大聖が動くのは、事件や暴力を振るう相手だけだ。何もしない相手を攻撃はできない。ウグググと悔しがる、伊織を無視して、メニューを開くとこれが食べたいと勝手に注文してしまう。
「まぁ、せっかく来たんだ。ゆっくりしていけよ」
「山都」
「いいじゃないか。で? お前の言っていた。世界を滅ぼす敵ってのは用意できたのか?」
「フフッ。獣の血が騒ぎ出したかな。だけど、残念ながら、まだ、見つかっていないんだ。何人か、候補はいたんだけど。君を確実に殺すとなるとちょっと心もとない」
可憐は言う。
「それに君がもっと強くなってから倒したいんだ。ほら、テレビゲームなんかであるだろ。最初は弱くても、コツコツと経験を積み重ねて、強くなって魔王を倒すという王道ストーリー」
なんて悪くないよね。
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