第1章

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突然の告白に蛇目の頭の中は真っ白になった。好き? 誰を、誰が? 影沼帽子が蛇目日傘を好き? 「君にだけは嘘をつきたくなかったんだ。男の子っぽい格好をしていたのも、君に振り向いてほしかったから」 でも、それも無駄だった。彼女には山都大聖という大きな光があったから、遠くから山都大聖と蛇目日傘が二人でいるとき、自分には見せたことのない、笑顔を見せた。所詮、自分は影なんだ。大きな光の前では霞んでしまう。 「やっぱり諦めきれない。ボクと付き合ってください」 「……え、えっと」 もじもじと言いよどむ。蛇目を背後から見ていた二人はもどかしい気持ちになった。影沼帽子が女の子だということにも驚かせられたが、まさか、告白までとは、 (どう答えるでしょうか) (知らないわよ) (と、とにかく見守るしかないですね) (そうね) と真朱と鏡子が頷き合い。蛇目は沈黙の末、言った。 「ごめん。貴女の告白は受けられない。私は、山都大聖が好きなんだ」 「そっか。ボクは山都大聖に勝てないのか」 そっかと頷き、彼女は走り出していた。影沼帽子が、事故に会った日、彼女は、蛇目日傘に告白しようと思っていた。自分の恋心。焦る気持ちと、迷いが事故を起こした。青信号だった横断歩道を信号無視で突っ走る、車にひかれて、何年もさまよい続けてん、結局、振られた。 「クソッ、クソッ、クソッ!!」 最初から負けていた。女の子だから、金髪だから、ハーフだから、何もかも負けていた。 「ボクだって男の子に生まれたかった。男の子だったら蛇目ちゃんに好きになってもらえたのに!!」 目の前に横断歩道が迫り、金髪の少年とすれ違った。 「おい、そこの!! 危ないぞ!!」 「え?」 視界の片隅に青信号が、赤色に変わり、スピードを緩めることのない、車が迫って来ていた。記憶が蘇る、ああ、そう言えばあの日も、こんなんだった。 「…………ああ」 「チッ!!」 舌打ちが聞こえて、金髪の少年が横断歩道を走り、影沼を抱え上げて走り抜けた。クラクションを鳴らして車が走り去っていく。 「イテテテ、おい、大丈夫か?」 「え、あ、はい。大丈夫です」 トンッとおろされて、ポンポンと土ぼこりを払ってもらいちょっと恥ずかしくなった。 「た、助けてくれてありがとうございます」
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