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「いや、気にするな。今度からはちゃんと青信号か、確認しとかないとダメだぞ」
もう死んでるとは、言えなかった。でも、怪我しなくてよかったと笑う少年を見上げた。山都大聖みたいな人だと思った。
「は、はい。気をつけます」
「ん。いい子だな。でも、その金髪」
「え? あ」
いつもはニット帽で隠していたのに、
「昔、いたんだよな。綺麗な金髪の女の子。あの子みたいになりたくて、この髪にしたんだけど、やっぱりダメだな」
なかなかなぁと前髪を引っ張る、少年に影沼は聞いた。
「その子の名前ってなんて言うんですか?」
「さぁな。知らない。ただ、金髪がとても綺麗だったことは覚えている」
「初恋とかですか」
「なんだ。子供のくせにもう、そんなこと気にしてるのか?」
「だって、映画みたいだったから……」
「いや、初恋じゃないな。あれは」
きっぱりと金髪の少年が言いかけたときだった。ガリガリガリと地面を削る音とものすごい形相のメイド服の幼女と、その荷台にのった少女が、金髪の少年、目掛けて自転車を走らせてきていた。
「は?」
「山都大聖っ!! またですか!! また、貴方という人は!!」
ブレーキを緩めることなく、走り抜けてくる。
「待て!! 待て待て、陰火。俺は自転車の乗り方は教えたが、人にぶつけるために教えたつもりはないぞ!!」
「……山都大聖」
影沼は、目の前に立つ金髪の少年の顔を見た。大きくなって背格好は変わっているけれど、面影と名前。山都大聖なんて名前の同姓同名はありえない。この人が、蛇目日傘の好きな人。
「おい!! お前、逃げるぞ!!」
「え?」
「見ろ!! あれを、こんなところでちんたらしてたら俺達、まとめてひき殺される!! 一日に二度もひかれそうになりたくないだろ!?」
返事を暇もなく、山都は影沼を抱え上げると背後から迫る、爆走、自転車から逃げ出した。そのあとはとにかく走った。陰火は荷台に。揚羽を乗せながらも巧みなドライブテクニックを見せつつ、山都と影沼を追尾してくる。
「クソッ、あいつらなんで俺の居場所がわかるんだ」
「……蝶。さっきから赤色の蝶がボク達を追いかけて来てる」
「そうか、揚羽の奴が赤色の蝶から俺達を監視してやがるのか!!」
クソッと一個の石を拾い上げると、山都は赤色の蝶に思いっきり投擲した。ぐしゃと赤色の蝶が弾け飛ぶが、その時には自転車の追跡者は、姿を現していた
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