第1章

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それができない、自分達は恋を知らない子供なのだ。これが大人になるということなら、こんな苦くて、辛くなるくらいなら、子供のままでいたほうがずっと幸せかもしれない。 ただ、遊んでいればいいのだから、でも、だからこそだ。いつまでも子供のままじゃいられない。赤色の蝶が一枚の手紙を蛇目の目の前にもってくる。鏡子達は遠くて、なんて書いてあるかわからなかったが、その赤色の蝶は、赤羽揚羽の蝶であり、その文面を読んだ、蛇目周囲がメラメラと目には見えない、炎が見えた。 蛇目日傘の周囲に数百匹の蛇が集結した。鏡子と真朱は思わず、後ずさりする。それは本能的な恐怖だったかもしれないし、中心に立つ少女がニヤリと笑っていたからだ。怒るでもなく、泣くでもなく、ただ笑う。真朱達はそれが怖かった。恋する少女というよりも、獰猛な捕食者を連想させるその光景にただ、震えた。蛇目は読み終えた手紙をグシャリと握り潰してどこかに立ち去った。ガタガタと震えていた、真朱達がやっとの思いで手紙を開くと、そのには一行。 『山都大聖が金髪の少女を抱えて逃走中、至急、捜索を願います。陰火、揚羽』 とそこで陰火と揚羽の二人は、自転車に乗ってニット帽の子供、影沼帽子を探していたのだ。おそらく、この金髪の少女とは、影沼のことだろう。山都とどういった経緯で遭遇したかわからなかったが、蛇目を焚き付けるには、これほどの燃料はないはずだ。それを読んだ、真朱と鏡子は顔を見合わせ、ご愁傷様と手を合わせたのだった。 一方、その頃、怒り狂う陰火達から逃げて回っていた、山都は街外れの廃屋に逃げ込んでいた。どこまでもしつこく追尾してくる彼女達を振り切るには、山都の獅子の力を使うのが一番なのだけれど、巻き込んでしまった、影沼にこれ以上、怖い思いはしたくないだろうと、力を使わずに逃げ回っていたのがおおいに裏目に出ていた。単なる偶然か、それとも必然か、ともかく事件の中心、影沼帽子に近づいているのに黒色のニット帽を被っていない彼女を、山都はただの一般人と勘違いしていた。もともと手がかりは少なく、手探り状態だったせいもあるだろうが、こうやって物語の中心に簡単に引っ張り込まれるあたり、伊織の言う『物語の主人公』なのかもしれない。 「なんか悪かったな。巻き込んで」 いえと答える。影沼を気にかけつつ、山都はんーっと考える。 「なんであいつらあんなに怒り狂ってたんだ?」
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