第1章

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蛇目の前に立てかけた、鏡から仮面を被った少女が顔を出していた。 「さ、境鏡子(サカイ、キョウコ)」 鏡から仮面を被った少女がズルリと身体を出して、外に出てくる。有名なホラー映画のような登場に、さすがの蛇目も驚いた。 「人の名前をフルネームで呼ばないでくれるって、そんなことどうでもいいのよ。用事があってきたの」 仮面の位置を調整しながら、鏡子は立ち上がる、赤色の着物の少女は立ち上がる。 「あのねぇ。用があるのはいいけど、鏡から登場はホラーだよ。一応、連絡くらいほしいな」 「私に、あんなボタンのたくさんあるものなんて使えないわ」 フフンと自慢げに胸を張る、鏡子に蛇目はハァとため息をついた。容姿は幼い仮面少女だが、実年齢は蛇目よりも、かなりの年上で、とある事件で鏡に潜む異界の少女だ。鏡の世界に潜ることで、別の鏡にトンネルのように、くぐり抜けることができる。 「そんなこと言うと、陰火ちゃんにバカにされるよ」 「陰火も使えないからいいのよ」 「そ、そうなの?」 そうよと頷く、鏡子に変につつくと面倒そうだと判断した。どうせ、電話の前で言い合いをする、鏡子と、白髪の幼女メイドを思い浮かべてちょっと微笑ましい。   「今度、教えてあげようか?」 「結構。今度、山都に教えてくれるって約束したから、陰火よりも早く覚えて、あいつを鼻で笑ってやるわ」 「自転車、陰火ちゃんが早く乗れたからねぇ」 「そ、そのことは忘れなさい」 「ハイハイ。わかったから、泣かないでね」 「泣いていわよ。悔しかっただけよ」 うーっと両手を振り上げて、悔しがる鏡子が、ハッと言った。 「そうよ。用事があって来たの」 「ああ、そういえば、そんなこと言ってたねぇ」 蛇目はのんびりと答えた。 「とにかく、来て!!」 ガシッと蛇目の手を掴むと、鏡子は鏡の世界にドボンと潜り込んだ。 「えっ? ちょっと、私、まだ、服、着てないんだけどぉ」 と言ったときにはもう遅い。脱出不可能な鏡の世界に引きずり込まれてしまった。 「おかえりなさい。鏡子。お迎えの用事にこんなに時間がかかるなんて、貴女、ノロマなんですね」 「ノロマじゃないわよ。この女が、下着姿で鏡の前にいたから声をかけにくくて困ってたのよ」 「言い訳ですか。情けないですね」 「うるさいわね!! あいつに文句を言いなさいよ」 ギャアギャアと言い合う、鏡子と陰火。
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