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二人に、ポニーテールの少女が雑誌を丸めてポコッポコッと思いっきり叩いた。アウッと痛がる二人を放置して、
「すみません。蛇目さん。長袖シャツとズボン、買ってきました」
「いいよぉ。でも、ありがとうね。こんな姿じゃ、外、出れないしね。君はいいお嫁さんになるよぉ。真朱ちゃん」
「そ、そうですか」
ポニーテール少女こと、真朱はクスッと微笑んで、嬉しそうな、
「ただし、年上の金髪少年のお嫁はさんはなしだからねぇ」
彼女に蛇目はしっかりと釘を刺した。クスッと笑いかけつつ、目を細めた。
「そうですか? 私は、一日中、ベタベタとくっついて回る束縛女はうっとうしいと思います」
「ほほう? 言うね。真朱ちゃん」
「貴女こそ、蛇目さん」
ニコニコと笑い合いながらジリジリと牽制を繰り返していると、数匹の赤色の蝶がヒラヒラと飛んできた。
「ねぇ。早く、缶蹴りしないの?」
と数匹の蝶を引き連れながら少女は言った。
「缶けり?」
「揚羽さん。勝手に蝶を出したらダメって言ってましたよね」
「仕方ないでしょ。勝手に出てくるんだもん。傷口、まだ、治りきってないし」
ほらと揚羽が自分の親指を見せた。彼女はとある事件で自ら、爪を剥いでしまったのだ。その傷口の絆創膏を新しいやつに張り替える時にうっかり傷口が開き、蝶が溢れ出したらしい。
「だからって、そのまま放置しないでください」
「出てきたと言ってもちょっとよ」
「そう言って、この前、外に出た赤色の蝶が騒ぎになったの忘れたんですか?」
「忘れた」
「覚えておいてください」
「嫌よ」
「なんでですか」
「山都お兄ちゃんがなんとかしてくれるから、大丈夫なの」
自信満々に答える、揚羽に真朱がカクッと肩を落とした。説得は難しそうだったと、蛇目はヤレヤレとため息をつきながら聞いた。
「ねぇ、君達、どうして、私を呼んだのか教えてほしいんだけどなぁ、缶蹴りって聞こえたけど」
と蛇目が尋ねると、真朱は話し出した。話の発端は、昨晩のテレビ番組で昔、懐かしの遊びというものがあったらしい。
「でも、私達、缶蹴りのルールを知らなかったので、蛇目さんなら知ってるかなと思ったんです」
「ふーん。それで缶蹴りね。最近の小学生は缶蹴り、しないの?」
「鬼ごっこくらいならしますけど、缶蹴りは、先生に缶を蹴るなんて危ないからしてはいけませんって」
「缶蹴りなんて、古いもの」
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