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「どこの誰か知らないが、ずいぶんと派手にやってるみたいだし、誘い出せると思ったがまったくダメだった」
「まぁ、君みたいな金髪野郎じゃダメだろうね」
クスリと伊織が笑う。
「ん? どういう意味だ?」
「さてね、まぁ、いいじゃないか。一週間も働いたんだ。こういうときくらいゆっくりしようじゃないか」
ヒョイッと山都の引っ張ると、伊織は膝に頭を置いた。
「お、おい。伊織」
「いいから。いいから」
ポンポンと頭を叩かれていた頃、公園に蛇目の高笑いが響いていた。
「どうした、どうした。チビッコ共、私から缶を蹴れないとは何事か!!」
缶を片足に置きながら、蛇目はあちこちに隠れて、こちらを狙う、陰火達を周囲を見渡す。缶蹴りなんて、小学生の頃、以来だったけれど、以外も身体は覚えていた。それから一時間ほどして、
「「「「ギブアップ」」」」
陰火、鏡子、真朱、揚羽の四人がクタクタになって座り込んでいた。
「情けないなぁ。みんな、この程度でバテるなんてねぇ」
ヤレヤレと肩をすくめつつ、蛇目から自販機から買ってきた、ミネラルウォーターを手渡した。
「蛇目さんのほうが、体力ありすぎだと思いますけど」
「アハハハハ。まぁ、あれだね。子供の頃から山都くんに引っ張り回されてたら嫌でも体力つくよ」
懐かしいなぁと蛇目は思い出す。あっちこっちに引っ張り回されては、いろんなことに首を突っ込んでいたからだ。
「山都お兄ちゃんの子供の頃ってどんな子だったの?」
「ん? そうだねぇ。今とあんまり変わらないかなぁ。いつでもどこでも走り回ってる感じかなぁ。止まったら死んじゃうというか、ブレーキの壊れた列車みたいだったよ」
ブレーキの壊れた列車という表現に、四人がうんうんと頷いた。 変わらない。いつまでも変わらない。彼は、出会った時からずっと突っ走っていて、でも、困った時には助けてくれる。
「あと、なぜかいつも女の子に好意を寄せられるんだよねぇ。不思議なことに」
「不思議じゃありません。山都様なら当然です」
と真朱がきっぱりと言い切った。その発言に揚羽もうんうんと頷いている。陰火と鏡子も否定する様子はなかった。
「そうだねぇ。変わらないんだよなぁ。彼は……」
懐かしみながら、今朝、見た夢を思い出した。黒色のニット帽を被った子供。
「ねぇ、お姉さん。ちょっといい?」
ザリッと公園に子供が入ってきた。
「どうしたの?」
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