第1章

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(こんな姿、山都くんにだけは見られたくないからねぇ) 内心で呟いた。 「そ、そうですけど、手がかりは少ないですよ。あのニット帽の子供くらいしか」 「そうでもないみたいよ。ほら」 部屋の隅っこに置かれた、新聞を鏡子が広げて、小さな記事を指さした。なになにと皆が覗き込み、揚羽が言った。 「えっと、謎の現象。高校生が子供に? 謎のニット帽の子供? なにこれ」 「山都が熱心に読んでたから、気になってたのよ。どうよ。これ、蛇目と一緒じゃない?」 確かにとみんなが頷く中で、真朱が言う。 「じゃあ、山都様は、この事件を調べるためにというわけですか。仕事だとは聞いてましたけど」 「あの男のことですから、きな臭さを嗅ぎ取ったんじゃないですか? 獣の嗅覚というやつで」 陰火が真朱に同意した。フムと頷き、 「わたくし達だけで解決するにしても、やるべきことはニット帽の子供を探すことじゃないですね」 「ニット帽の子供を探すにしても、手がかりが少ないわよ。山都みたいに嗅覚が鋭いわけじゃないしね」 山都大聖がいないとうだけで、こうも行き詰まるものなのかと誰もが痛感する中で蛇目は一人、今朝、見た夢を思い出していた。夕暮れ時に出会った、あの子も黒色のニット帽を被っていた。名前を、 「影沼、影沼帽子(カゲヌマ、ボウシ)」 と言った。遠い記憶の奥底に眠っていた思い出が蘇る。 「カゲヌマ、ボウシ? 誰それ?」 「たぶん、ニット帽の子供の名前だと思う」 思い出していく。幼くなった子供の身体になって当時の記憶が蘇っていく。 「約束したんだ。明日になったら遊ぼうって」 名前だけは思い出したけど、それ以外はもやがかかったようになって見えない。 「じゃあ、振り分けましょうか。私と蛇目ちゃんに鏡子さんは影沼帽子について、調べて、陰火さんと揚羽さんはニット帽の子供を探してください」 真朱の一声で、チーム分けされてみんなが捜査を開始し始めた頃、 「ほらほら、山都。このパフェ、とても美味しいよ。君も食べてみるがいい。ほら、あーん」 山都と伊織はファミレスでパフェを食べていた。 「…………」 「あーん。食べてくれないのかい?」 「あー」 と山都はキツく閉じていた口を開けた。 「なーんてね」 とスプーンに掬っていた、クリームを食べた。 「アハハハハ。どうしたんだい。食べたかったのかな?」 「食べたくねぇよ」
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