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「君はもう、武幸子だって何度も言ってるのにさあ」
ぷうと頬を膨らませる仕草が、何とも幼い。
「な、慣れてないのよ、だって、武君、の方が呼びやすくて」
「ダメ。もうダメ。次もそう呼んだら、許さないよ。……おしおき、するからね」
剣呑な光を浮かべ、妻を見る瞳が妖しく輝く。
「それとも、今すぐしちゃおうかな」
顔を上げる間もない。
伸びた手は彼女の胴をとらえ、あっという間に横抱きにされた。
きゃあ、と上げる嬌声に、彼の含み笑いが重なる。
「可愛い声出しても、ダメ」
「お、おしおきって、何を?」
「何しようかなあー」
組敷かれた上から覗き込む彼の前髪がはらりと額の上に落ち、幸子の頬をかすめた。
「僕がしたいこと、するよ」
息が吹きかけられる、間近に、吐息が嬲るように耳元に。
手の平は着衣の上から太腿をゆるくなで回している。
喉から漏れる声と、上がる息を隠せない。
「そんなの……おしおきにならない」
顔を背けたのは、逃げるためじゃない、露わになった首筋を見せるため。
彼は顎の稜線に沿って、触れるか触れないくらいの口付けを落とし、舌先でちらちらとくすぐる。
「そう? どうしておしおきにならないの?」
「だって」
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