【序章】ふたりぼっち

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月日は流れ、おれ、那智は12歳。 兄、治樹は18歳。 ―――おれ達は、今日で家を出る。 × × × それは兄さまが大学受験を控えた頃。 今まで両親に対して従順だったおれ達が、初めて両親に反発した。 完全に親と立場が逆転してしまった、夏休みのことだった。 「俺達の条件は三つ。 一つ、俺と那智が来年この家を出てもいい許可を下ろすこと。 もうウンザリなんだよ。この家で暮らすなんざ。これからは俺が那智の面倒を全部見る。 まあ元々俺がずーっと見てきたんだけどな。 二つ、俺と那智がこれから生活するに当っての生活援助。 俺が就職するまででいい。永久に世話になろうなんざ思わねぇからな。   三つ、俺と那智が就職するまでの学費負担。 これくれぇ当たり前だろ? あんたら、今まで親らしいこと何一つしてねぇんだし。 これが一つでも守れねぇんだったら、俺はテメェ等を地の果てまで追い回して復讐してやる。 分かるな? あんた等も馬鹿じゃないんだ。 今まで散々俺等をコケにしてきたんだし? 痣も体に残ってるんだし? 根性焼きも色んなところについてるわけだし? そういう奴等が何を起こしても不思議じゃねえだろ。 警察に突き出すことも出来るし、裁判起こしてもいいし、別の手であんた達を監獄に行かせられることもできる。 おっと、これは俺も監獄行きだろうけどな。復讐法なんて幾らでもあるぜ? 今此処でしてもいい」 ニッタァ。 兄さまは目前の両親というべき人達に、シニカルな笑みを浮かべた。 あまり顔をよく知らない父親、数日前までおれ等に手を上げてくる恐かった母親がとても小さく見える。 それだけ兄さまの権限が強くなったんだろうな。 兄さま、確かに凄く強くなったと思う。 兄さまってとても秀才なんだけど、地元の不良を伸してしまうほど喧嘩も強いし、行動派だし。 「守れるのか? 守れねぇのか? さっさと答えろ!」   ガンッ! 兄さまは黙りこくっている両親に前でテーブルを蹴っ飛ばして凄みを見せ付ける。 舌打ちを鳴らして苛立ちを見せる兄さま。 「行動を起こすぜ?」 その言葉に二人は蒼白な顔をした。
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