06. 撒かれる感情

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× ところかわって福島朱美の住むアパートにて。 午前中は大学、午後はバイト、帰宅したのは夜九時過ぎ。 くたくたになって帰宅した朱美は、浴槽に湯を張って入浴している真っ最中だった。 今日一日の疲労と汚れと垢を落とすために、半身浴を楽しんでいるのだが朱美の心は曇っていた。   大学で友香から聞いたのだが、彩加が重傷の怪我を負ったらしい。 しかも浩司曰く、「優一が行方不明みたいなんだ」憂慮を抱きながら眉根を下げ、付け加えて兄弟が病院から逃走したことを聞いた。 逃走したのは事件の犯人だった、から、なのだろうか? なんだか自分の周りで騒ぎや不幸ばかり起こっている。 それを朱美はとても悲しく思った。 楽しく愉快に暮らしたい彼女は、こういった暗いニュースが大の苦手だったのだ。 今日は行けなかったが、明日、友香と浩司で見舞いに行くつもりなのだ。 浩司がついて来るのは、彼なりの優しさだろう。 親しい仲ではないが、自分達について来てくれると言う。 そのために車を出してくれるとか。 浩司は車の免許を持っているのだ。 浩司の有り難い申し出を受け入れた朱美は、明日の予定を脳内で立てながら入浴を楽しむ。 小一時間ほど入浴を楽しんだ朱美はそろそろ出ようと、浴槽から上がる。 水気をよく拭き取り、タオルで髪を拭きながら下着や寝巻きを着ていく。 しかし上はブラのままだった。 まだ上がったばかりで暑いから、後で寝巻きを着ようと思ったのだ。 上着を腕に掛け、鼻歌を交えながら部屋に入る。 カチンと朱美は固まった。 何故ならば、部屋にいる筈も無い人がいたのだ。 だって自分は一人暮らしなのだから。
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