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「にーいーさーま」
後部座席でおとなしく飯を食っていた那智は、完食した弁当の空箱を片手に俺の顔を覗き込んでくる。
食べ終わったと一々報告してくる那智は、俺に構って欲しいみてぇだ。
話は終わったかと服を引っ張ってくる。
「悪い悪い、寂しい思いさせたな。すぐ後ろに移動するから」
「んー、お仕事だから仕方が無いと思いますけど……ンー。ンー。やっぱり寂しいです。でもお仕事の邪魔はしたくないですし」
ションボリと肩を落とす那智が可愛くて可愛くて、俺は那智の頭を撫でた。
「お詫びにキス「若旦那、俺のいねぇところでイチャついてくれ! 頼むから!」
チッ、俺は舌を鳴らす。折角のムードが台無しだ。
不機嫌になる俺に対し、勘弁してくれと鳥井は溜息。
何が悲しくて野郎のいちゃつきを見ないといけないんだ、なんて言うものだから「野郎じゃなくて兄弟のいちゃつきと思えば良い」助言。
結局は一緒だろ、鳥井は憮然と返してラジオをつけた。
スピーカーから今日の天気予報が流れてくる。
俺等の住む地方の降水確率は0%だとか。
「ったく、部屋に泊めてやるけど、俺のいるところじゃいちゃつき禁止だからな。若旦那。いちゃつくなとは言わないけど」
「雇用人がほざくな。てめぇは俺の債務者になるんだし、逆らえない立場だろ」
「はぁああ……ほんっと若旦那は厄介な性格だぜ。とにかく発進するから」
鳥井の言葉に、那智はおとなしく席に座る。
発進する前に俺は後部座席を移動、那智とぴったり寄り添った。
嬉しそうに俺の体に抱きついてくる那智の頭を撫でて、俺は少しずつ景色が変わり始める車窓の向こうを見つめる。
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