【序章】ふたりぼっち

5/16
460人が本棚に入れています
本棚に追加
/401ページ
食卓にて(PM07:53)。 ――バンッ。飯を食っていた時のこと。 突然、廊下向こうの玄関扉が開いたと思ったら、ズカズカと喧しい足音がこっちに向かってきた。 カレーを食い終わろうとしていた俺等の前に現れたのは、「何してるんだよ!」ヒステリック気味の母親。 何しているも何も、飯を食っているんだけど。 あんたの作った三日連続のカレーを食っているんだけど。 何だか虫の居所が悪いみたいだ。苛々している。 那智は母親の形相に身を縮ませているし。 と、思った瞬間、母親が那智の腕を掴んで、床に投げた。 ベタンと尻餅つく那智は何が何だか分からず、「ぅぇ……」泣き顔を作ってしまう。 幼い弟はまだ6つ。 こんな手荒な真似されたら、子供は誰だって泣きたくなる。 俺は急いで椅子から降りると、那智の体を抱き締めて何するんだと母親に抗議。 「部屋に行け!」 命令されたのはその直後。 足蹴りされたもんだから、俺は思わず那智をキツク抱き締める。 いっきりなり何するんだよ……まだ時間じゃないだろ。 足蹴りされた箇所がすこぶる痛む。 痛みで顔を顰める俺に対し、「ううっ……」マジ泣き手前の那智はスッカリ怯え切っていた。 弟の泣き顔が気に食わなかったのか、母親は俺の腕から那智を引きずり出した。 いきなりのビンタ。 乾いた音がリビングキッチン内に響いた。 那智は痛みにボロボロ泣き出すけど、何も言わない。恐くて何も言えないんだ。 身を小さく小さくしちまっている。
/401ページ

最初のコメントを投稿しよう!