【序章】ふたりぼっち

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自室にて(PM10:58)。 明日、学校でどうこの痣を隠そうか。顔ぶたれたからなあ。   いっそ学校をサボるってのも手だよな。 どーせ学校じゃ俺のこと、必要とする奴なんかいねぇし。 教師も多分、俺が虐待を受けていること認識はしているだろうけど見て見ぬ振りだしな。 極力関わろうとしねぇもん。 近所でもちょっと俺等の名前、嫌な意味で有名だから……でも誰も助けちゃくれない。 世間なんて冷たいもんだ。 誰も俺のこと、必要としてくれねぇ。 あ……そんなのやだ。 必要……されてぇ。 誰でもいい……俺を必要として欲しい。 「っ……那智……なち」 明かりの点いていない自室の畳み上で大の字に寝転んでいた俺は、痛む体を無視して上体を起こす。 母親の許しを得て、やっとのことで自室に戻って来た俺は、気絶してる弟を連れて敷布団に寝かせたんだけど、那智はピクリとも動かねぇ。 蒼白な顔で敷布団に寝転がっている。 でも生きている、ちゃんと那智はまだ生きている。 スーッスーッと寝息が聞こえてくるから。 今まで俺、母親の八つ当たりを一人で受けてきた。 父親は“別”の家族にゾッコンだから、殆どこっちの家には顔を出さないし。 孤独だった。 ただただ孤独だった。 那智が生まれてからは、一人じゃなくなってすげぇ心が楽になった。 だから那智。 ひとりにしないでくれよ。
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