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俺は体を引き摺って、這いながら寝ている弟の隣に辿り着くと寝転ぶことに成功する。
小さな体を抱き締めて、俺はさっきは出なかった気持ちを、涙を溢れさせた。
「ごめん、守ってやる言ったのに……那智ごめん」
今度は守る、守るから。
だから、必要としてくれ。那智。
嗚咽を噛み殺して弟を抱きすくめていると、「いたい?」蚊の鳴くような声が聞こえた。
目を開ければ、顔に生々しい痣を作った那智の姿。
ぼんやり目を開けてこっちを見つめてくる那智は、俺の頬を触ると、「イタイイタイとんでけ」子供らしい呪文を唱えてきた。
涙の量が増えた。
「那智……」
「泣かないで、泣かないで。にーさまが泣いていると、おれも悲しい」
ボロッと那智が涙を零す。
それを見て、俺は笑って見せた。
「馬鹿。兄さまはなっ、てめぇにもらい泣きしたんだ。泣いてねぇよ。泣いてっ、ねぇから」
「もらいなき?」
よく分からないと首を傾げる那智に一笑して、俺は弟の体を抱き締めなおす。
そして子守唄代わりの言葉を那智に向けた。
―――那智、約束だ。
―――約束?
―――ずーっと俺等は一緒だってこと。俺等、同じ血が流れてるんだ。心から信用できるのはお互いに兄弟しかいねぇんだし。分かるか? この意味。
―――うーん。難しいです。おれ、兄さま大好きですよ?
―――あー……那智には難しかったか。じゃあ、分かりやすく、俺等、大人になっても一緒だ。
ずーっと、ずーっとさ。
いつかこの家を出て、二人で幸せに、のーんびり暮らそうな。
俺等、ずーっとずっとずっと一緒だぞ。
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