第1章

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奇跡的な出会いから今日でだいたい1ヶ月。 あれから数回のデートをこなし、俺も愛里咲も世間一般的に言われるような恋人として、日々を楽しんでいた。 今日は記念日で、愛里咲が独り暮らしをしているマンションでお家デートだ。 紛れもなくビッグイベント。 今は駅前で愛里咲を待っているのだが、俺の手にはしっかりとプレゼントが握られている。 その中身は、愛里咲が最近ハマっているキャラクターの人形ではあるが。 最初のうちは俺も浮かれていたし、あまり気にならなかったが愛里咲には少し変わったところがある。 なんというか、好きな物へのこだわりが異常に強いのだ。 今はあの変なキャラクターのグッズを集めているが、愛里咲の収集癖は強く、それこそ同じようなものでさえバージョンが違えば必ず購入している。 まあ、こだわりがあるのはないよりましだし、こんなことは俺にしてみればなんの問題もない。 それに、人間の最下層に位置する俺にしてみれば、眩しいくらいだ。 愛里咲には言ってないし、これからもいうつもりはないが、俺には隠れた犯罪の前歴がある。 何不自由なく、普通の家庭で育ってはいたが、普通すぎたのがいけなかったのか、俺は常に退屈していたからだ。 万引きや自転車泥棒などは幼いうちからゲーム感覚でしていたし、手先が妙に器用な特技を生かして、ピッキングなど簡単に出来てしまうことから不法侵入など最近までしていた。 まあ、入っても何かとるわけでもないし、入れた段階で俺の興味はいつも終わっているのだが。 愛里咲と出会う前まではそんなことを繰り返し、警察のご厄介になることもなく暮らしていた。 そんな俺に、天使が舞い降りたのだ。 これ以上刺激のあることなんてないだろう。 とりとめもない思いがひとくさり頭を巡りきったころ、遠くの方からこちらに手を振る愛里咲を発見する。 ああ、やっぱり可愛い。 ほら、近くにいる男どもが妬みの視線をおくっている。 なんていい気分なんだ。
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