第42章:いつかの敵は、今日の仲間

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咲は携帯電話を右耳に当てたまま、非常階段を上がりきり、屋上のドアを開けた。 木製のベンチが横に三つ並んでいる細いバルコニーを歩き、人のいない場所まで移動する。 白い柵に持たれ、海を眺める。茶色い髪が、強い風に煽(あお)られていた。 携帯電話からは、フルートのような母親の声が、流れ続けていた。 『口で全て読み上げるのも時間がかかるし、あなたも覚え切れないでしょうから、紙をスキャナーした画像を、写メで送るわ。 それを…優に見せるか、伝えることができれば良いんだけど』 マリアの声は、海の波しぶきの音と共に、携帯電話のスピーカーから聴こえている。 「オッケー。今すぐ送ってくれ」 『ごめんなさい、ありがとう…良かった。あなたがいてくれて』 マリアのズズッと鼻を啜る音が聞こえた。咲は淡々とした口調で話す。 「勘違いすんなって。俺が心を入れ替えたのは、サードニックスの立場に同情してる訳じゃねーからな。 勝てる見込みが無くなった。そう俺が判断したからだ。 いや、判断させられたんだ。あの子たちに……」 『え?』 咲は海を眺めながら、最後の部分は静かに言った。
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