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画面に映し出されたのは、幸せそうに寄り添う新郎新婦。
それを心から喜んでいるであろう友人や親戚一同。
皆、それぞれ笑顔が素敵で、中には嬉しさのあまり涙する人までいた。
「この撮影をするのが君の仕事だよ」
社員の声など俺の耳には届いていなくて、俺はただその映像に見入っていた。
俺はこの日、初めて他人の笑顔を観て涙を流した。
他人の幸せをこんなに喜んでいた俺はおかしかったのだろうか。
その時は何も分からず、幸せそうな新郎新婦たちを観て流したんだ。
披露宴が終わり
「どうだったかな?ヒロキ君」
俺は社員にバレないように下を向きながら涙をぬぐい
「これから・・・よろしくお願いします」
と心から答えた。
考えてみれば、口下手で人見知りの俺がウエイターなんてできなかったであろう。
思えば、俺は偶然なのか必然なのか、知らず知らず導かれていたのかもしれない。
バイトが終わり、裏口から外へ出ると何人かのバイト生がたむろって話をしていて、その一人が
「新人、こっち来いよ!!」
と手招きしていたが、
「お疲れ様です」
小さく呟き、タバコに火を点けながらその場を立ち去った。
近くのコンビニで飲み物を買って帰りの車を待っていた。
周りには同じ結婚式場のバイト生であろう子達が同じように迎えの車を待っているようで、ワイワイ楽しそうに話をしていた。
俺は気まずくて距離を取ってタバコを吸っていると、一人の子がこっちへ向かって走ってきた!!
「た・ば・こ・は・20歳になってからぁぁ!!」
と言いながら向かってきたその子に俺は恐怖した!!
「なんてね(笑)君も式場で働いているの?今日見なかったけどバイト生?」
初対面でこんな冗談言えるの!?ヤバし
一応「はい・・・」
とだけ、ぎこちなく返事をして後ろを向いた。
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