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――1――
参考書に挟っていた栞が足もとにすべり落ちていった。正直、それを拾うのも面倒だった。と言うより、栞なんてどうでもよかった。
言わなければよかった――
後悔が押し寄せてくる。
帰宅中の聖陵学園高校の生徒たちが駅に向かって歩いていく中、栞を拾いあげ、意味もなく参考書のページをめくってみる。
学校を出てから、、正確には教室を出た瞬間から、ずっと迫田美雪(さこたみゆき)の顔がちらついて、悔やむ気持ちとばつの悪い思いに苛まれ気分が滅入っていた。
迫田との出会いは一年前のちょうど今頃だった。役員分担で学年図書委員にあたり、他のクラスから選出されてきた迫田のことは、この委員を通じて知った。
月に一度の活動で頻繁に顔を合わせていたわけではないが、本の貸し出しチェックや整理、修理といった管理業務を一緒にやるようになって、彼女の控えめな性格やしぐさ、雰囲気に徐々に惹かれていった。
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